約3万年前に人類が台湾から沖縄に渡った航海を人類学の研究者や探検家らからなるチームが再現して検証する。国立科学博物館(東京)が9日、発表した。この夏、与那国島から西表島の75キロを、乾燥した草を束ねた舟で渡る。来年は、さらに距離が長く、黒潮が流れる台湾から与那国島の海を航行する予定だ。

約20万年前にアフリカで誕生した現生人類が日本に渡ったのは、約3万8千年前とされている。チームを束ねる同博物館の海部陽介・人類史研究グループ長によると、ルートは三つ。朝鮮半島から対馬を通り九州へ入る「対馬ルート」、台湾から南西諸島を北上する「沖縄ルート」、ユーラシア大陸の北側からサハリンを経由する「北海道ルート」だ。

今回、再現するのは約3万年前と考えられる沖縄ルート。島と島の間を舟で渡ったと考えられ、距離も長く、難易度が高い。

どう海を渡ったか検証するため、現地で入手できる自然の材料で舟を作る。当時の遺跡からはオノが見つかっていないため丸太舟は除外。竹のいかだでは海を渡るのが難しいと考え、草舟で渡ったと想定した。

与那国島から西表島への航海は、与那国島に自生している多年草のヒメガマを、ツル性植物で束ねて作った舟を使う予定。計算では25時間程度かかる。台湾から与那国島への航行は、黒潮に流されるため200キロ程度になる見通し。

費用は5千万円の見込み。インターネットを通じて寄付を募るクラウドファンディングhttp://readyfor.jp/projects/koukai別ウインドウで開きます)を9日始めた。

寄付者には特典として、プロジェクトの経過を随時、情報提供するほか、沖縄の遺跡調査体験や、航海再現実験の背景に関する海部さんの新著「日本人はどこから来たのか?」(文芸春秋)のプレゼントなどがある。(神田明美)