②文明開化期の明治時代に、日本人類学の祖とされる東京帝大の坪井教授は、北海道における竪穴遺跡と石器・土器やアイヌからの聴き取りなどの現地調査を行いました。そこからアイヌの伝承は信頼できるとしてそれを踏まえ、学術用語コロボックルという仮り名を定めて列島史始まりの石器人問題を学界として活発に論じ合いました。結論的に、弟子のフィールドワーカー鳥居龍蔵は大正6年に学会講演で、明治32年の調査から広まったそれまでの巷間の誤解を改める「北千島民(仮称:留頓ルートン)は相当古い第1渡道のコロボックルである」と明言しました。札幌大の瀬川教授も現代の学界人として本件を扱い、坪井説と同じく現地調査を重ねたジョン・ミルンの研究に仮託しつつ事実であるとの認識を示しています。注目は③この小人コロボックル伝承は、(独)ベルクマンが唱えた寒冷地の動物は同種他地域のものに比し大型化するという説に反している事ですが、逆に言えば南方から北上した古い「北インマレイド系」(仮称、東南アジアの古種族インマレイドを、古モンゴロイドとした呼称は欧米学者の偏見用語で、モンゴロイドとは寒冷・降雪・寒風環境で身体変化した新種族)で、青森から北上したとされる遺跡・遺物の考古学分析 (全国1万件超え祖代遺跡) と符合します。➃鳥居調査で、あの竪穴は父が、祖父が、・・・ずっと昔の祖先がと北千島民は答えており、近年の北千島の研究で6千年前の縄文遺跡が確認され(ワシントン大 Dr. Ben Fitzhugh)、また、北千島民はカムチャッカ南南部がむしろ主体だった(北大 高瀬克範)事が明らかになっていますが、気候条件がより厳しい地域に遥かな昔に「道東ゲートウェイ」から北上して行っていたというこれらの事は重要です(食豊かな処女地の魅力だったか)。
図左下、米の高校教師参考の一教材動画ですが、最新発見のニューメキシコの「足跡」から、ルートC、Dを含めて一応巷間の諸説を網羅して基礎的な特色・実証面の問題点を紹介し、学生が考え・調べるための素材にもなっています。上図の日本ルートですが、舟が2万年前と紹介されているのは、発見最古の千葉・市川の縄文舟7,500年前と伊豆~神津島の黒耀石採取の生業航海38,000年前の中を採ったのでしょうか? 沿岸が離れる千島列島については、stepping stone として渡って行った感じを出しています。世界の議論がこういう状況となれば、明治文明開化の先達の諸議論に光が当たりますが、東京帝大の坪井教授による①日本の始まりを科学的に探求する、②学術用語コロボックルを導入して処罰の恐れなしに自由に研究議論する、③衝撃のダーウィン進化論を受け止め、貝塚遺跡人はアイヌ以前のより古い別種人というモース教授の実証考古学成果の理解、➃自らの北海道遺跡の実視とアイヌ聴き取りによる両面からの現地調査内容の判断 により開花期に科学的な真実追求の学問確立を目指したことが注目されます。諸外国の文献等の研究も踏まえた事でしょう、アメリカ北部まで視野(鳥居龍蔵の回想、大正8年帝大紀要)に入っていたことは驚くばかりで、他を抑圧することも無く小金井教授等の多数派に抗し奮闘されていたのは尊敬します。北海道新聞の記事、「鳥居龍蔵が恩師である坪井正五郎のコロボックル説を否定した」は、大正6年になって(北千島調査の18年後)師の説に関し学会講演で北千島コロボックルであるとはっきり求め人類学誌に記述されている北海道史の基本的な重要事項と異なる誤解報です。
基本的に五月雨の渡来ですが、時代を経て戦いに強い富者のDNAの影響が島国に拡がったものです。明治の文明開化で列島史始まりの実証的な研究において、東京帝大の坪井教授は遺跡遺物の調査から「本邦の石器時代人民は一種類(コロボックル)であった」と明言しています。教室は扱っていませんが、コロボックルをおとぎ話と片付けるのは誤解であり学術用語をめぐる正しい内容とおとぎ話を加えた教え方とせねばなりません。そもそも②、出アフリカの新人類黒人が亜熱帯を越えて「北インマレイド」に変化し、約4万年前にフネで家族が北部九州に渡海して長く重要な基層の「祖代」が始まり(縄文を加えて「基盤」)ましたが、欧米先生が「古モンゴロイド」と呼んだのが誤解の元で、寒冷・降雪・寒風に適応して身体変化したモンゴロイド化人種の登場はずっと後の事〔2.5-1万年前から、(米)Harvard大 Dr. Howells〕です。テレビ番組などでDNA分析を紹介し誤解させる弥生人なんていません。江戸人と明治人も外見が大きく変わったものの、中は替わっていないことは皆承知の事です。五月雨渡来の人々を過度に強調するのは誤解の元です。それよりも、最新の研究で神武東征における最初の内陸進入の試みにおける日本書紀の記述と河内潟の古地形分析の状況が一致していること(「日本の誕生」、長浜浩明)が分かり、文献学の進展もあって(仏)レヴィ・ストロースが正に「日本は神話から歴史が滑らか」と説くようなことから、年表を新しく理解すべきでしょう。