インドで8万年前からの石器群が発見され、現生人類の移住史の抜けていた重要な中間ピースが埋まりました(Nature communications)。
第1図、発掘は豪・印・米英加の15名の研究者が、印中央部のDhaba河岸の斜面地域で3ケ所同時期に、川面の22m上から地面を掘り下げて、4万年前に至る豊富な石器群を得ました。豪シドニー近くの大学における赤外線年代測定IRSLにより、状況が明らかにされました。注目すべきは、①東部アフリカ、インド、豪州北部の石器の類似性です。これにより現生人類の出アフリカ(10~8万)、東部アラビア、東進してインド(8万)、インドネシア・スマトラ(7.3万)、豪州北部(6.5万)という早い東進が確認されたこと、②第3図、橙色線の沿岸・河川沿いの移住ルートが確認されたこと、③7.4万年前のインドネシア・スマトラにおける史上最大のトバ大噴火でも、インドではそれまで考えられていた“噴火の冬“などはなく、人々の人口は着実に増えていることが確認されました。
実は、大きな成果を手に出来たのは日本かもしれません。出アフリカからSundalandまでの「東進」が時期も含めて確認され、フィリピン(6.7万)・ラオス(6万)、台湾5万、九州4万、北海道・沖縄3.2万の沿岸ルートでの拡がりが繋がります。明治以来の学者が感じていたルーツが南方沿岸であることもはっきりしました。そして、第2図、北海道「日本祖人」が「最初のアメリカ人」候補であることも、出アフリカからの東進・北上の流れの中で位置づけられることになりました。巷間の書籍、博物館等の日本人のルーツは、第1図の誤解を与える①②③などではなく、はっきり”北上“に訂正が必要です。そもそも祖先の事、私たちのルーツに直結するアジアのこのような有意義な発掘に、日本が参加し得ていないことが問題です。そして、子供たちにこれらのことを教えなければなりません。