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アジアの楽園Sundalandの探訪も暑い夏の8月は、当国含めて近現代史になりましたが、また、先史に戻ります。
先般シンガポールで、専門家1年生向けという考古学の良い教科書を入手しました。こういう本を一般書店に置いているところが流石のシンガポールです。
当国1、2の名門のバンドゥン大学は、工科大ですが流石に旧版は所蔵していてかねていい内容だと思っていました。
最新第6版は、考古学関連全分野をカバーして新たな内容を相当増補しているほか、カラー写真となり、かつ、量も広範多岐にわたり多く、世界をリードする英国らしい素晴らしいものです。
特に、考古学は単に事実の記述に留まらず、事実の歴史的な意味合いを 「説明」Explanationすることだとする、New Archaeologyを標榜しています。
それに関する諸説の変遷、今の議論の最前線の内容が図解、図表等とともに充実している正に「考古」のテキストです。
無論、地道な発掘等の内容は、近年の種々の機材も含めて方法論としての基本が十分記述されています。
また、総合的な発掘プロジェクトの事例も意義とともにその実情が多数紹介されています。
先日紹介しました「氷河期以後」After the Iceは、正にこの考古「説明」の流れの先端を行く、コンピューターを駆使した科学的な方法に基づくもので、著者もこの教科書に採りあげられています。
そして、日本では考えられませんが、私が拙著(アジアの楽園探訪記)で「石器人に対する認識を大きく変えた。」と紹介しました驚きのトルコ東南のギョベクリ・テペGobekli・Tepe遺跡が、早速入っています。
万年頃・万年を越える人類先史の焦点と考える時期について充実していますので、私には素晴らしい選手たちのサッカー・ワールドカップを真近の席で観戦している気分です。
但し、欧米中心と成りがちなためのみならず、実証が不十分とみているのでしょうか、東南アジアは少なく、アジアが全般に少ないのは残念ですが。やはりあちら系のワールドカップに出るのは大変なのでしょう。
さて、現生人類がアフリカを出てからの中東、アジアは世界先史の中心的な意義を有し大変重要だと考えています。
地球規模の気候の最終氷期最寒冷期LGM(2万年前頃)と寒戻りYD期(1.3~1.1万年前頃)には、欧州の殆どの地域は人が住めない状況でしたが、赤道地域のアジアの楽園スンダランドは、一貫して恵まれた条件にありました。
また、英国の誇るストーン・ヘンジStone hengeなどの欧州巨石遺跡(地中海地域の物より古い)が、何故か大西洋岸に偏っているのはどこから?という謎。
遠いマダガスカルMadagascarに何故、楽園地域の人の末裔がいるのか?
遠く離れたドラヴィダ・タミルTamil語が、日本語に共通する言葉が多く近いと言われるのは何故か? 何故、中国、沿海州など近い大陸の言葉でないのか?
などは、早い時期の海のルートの伝搬を考える必要があると思いますが、テキストには記述されていません。
当地に住んで動いてますと、軽易に乗り降りできるミニバス、隣の県への大型バス、隣の州への長距離夜間バスなど独特の運輸様式とバス停留所があり、休暇の帰省を川上に上がると表現するなど万年の舟人、海の民の優れた交易行動力から理解できます。
各地に舟着き場、租界があったと思いますが、木・竹の施設や船は残らないですし、租界もその後の陸勢力に溶け込んだのでしょう。巨石構造物は残り、人や言葉は端や島(陸の孤島含む)に残ると言えます。
教科書も認めている通り、東南アジア熱帯地帯は、遺骨・遺物が残りにくいですので、楽園スンダランドの巨石遺跡グヌン・パダンは、地中に時代を異にする3層以上を有する大変古いもので注目されます。
当地でも認識されてきていて、書店に並んでいます。
また、11月、英国ロンドンで、先史遺跡についての公開会議が行われますが、前述のギョベクリ・テペなどとともに当地グヌン・パダンもテーマの一つです。